2012年9月15日土曜日

舌診(4)

 東洋医学<漢方医学・鍼灸治療>での診察は、望診聞診問診切診の4つの方法を用いて行います。これを、「四診」と言います。望診の中に舌診があります。
<参考資料:医学生のための漢方医学>から引用します。
①舌質の望診
 舌質の望診では、主に「舌の光沢」・「舌の形状」・「舌の運動」の三種を観察する。
※「舌の光沢」は、正常なものでは淡紅色である。淡白なものは陽気の不足を表し、淡白な上に痩薄で舌苔が少なければ気血両虚である。紅舌は熱証の存在を意味する。絳舌は深紅色の舌で、熱邪が営分や血分に入ったことを示す。内傷病で少苔・裂紋のあるものは陰虚火旺のことが多い。紫舌は気血の凝滞を示し、特に血瘀に多い。
※「舌の形状」は、正常のものでは、変形がなく、十分な肉質があり、左右対称である。胖大のもの(浮腫状で大きい)は、多くは体内に水湿や痰飲が滞留していることを示し、そのうちに淡白で歯痕を伴うものは脾陽虚に多い。痩薄なものは気血が舌を充盈(えい)することができないことを意味し、陽気や血や陰液が長期にわたって不足していることが疑われる。点や刺(舌面の点状隆起)は熱邪が内結することによって生じる。点は熱入営血・心肝火旺に、刺は気分熱盛や腸胃熱盛に多い。舌尖部の紅点は、心火や心肝火旺で生じやすい。裂紋(舌の裂溝)は、陰液や血の虚損(陰虚や血虚)により生じたり、湿邪が陰液の布散を阻滞して生じる。胖大舌に裂紋を伴うのは気陰両虚が多い。歯痕(舌の周辺に歯型のついたもの)は、脾の水湿の運化の障害の結果である。鏡面舌(無苔で舌乳頭が消失し、光ったように見える)は、陰液や血の損傷が重く、舌を濡養できないために生じる。
※「舌の運動」で問題となるものはいくつかあるが、振戦する場合には肝風の存在が疑われる。舌の偏位は痰湿が経絡を阻滞して生じる(脳卒中に多い)。舌の知覚・運動麻痺は、内風が痰や瘀血を夾(はさ)んで経絡を阻滞し、営血が舌を栄養できずに発生する。
②舌苔の望診
 舌苔の望診は、主にその「色調」と「性状」の二種を観察する。舌苔は、本来胃気の上蒸によって発生するもので、正常の舌では薄白苔がついている。以下は病的な舌苔である。
白苔」は、一般に表証や寒証を示す。「黄苔」は、一般に裏証や熱証を示す。膩外感病で「白苔」から「黄苔」に変化するのは、邪が表から裏に入り、化熱したことを示す。「」は熱邪が軽いことを、「深黄」は熱邪が重いことを、「焦黄」は熱結を示す。「灰苔」で湿潤しているのは痰飲内停か寒湿であり、「灰黄色」は痰熱か湿熱であり、「灰苔」で乾燥しているのは膩熱盛膩傷津か陰虚火旺である。「黒苔」は裏証を示すが、寒熱・虚実のいろいろな病態で生じる。
 舌面は適度に湿潤しているのが正常の状態で、津液が正常に上昇(上承あるいは上蒸という)していることを示している。「滑苔」(舌上が水っぽくヌルヌルしているもの)は陽虚によって水湿や痰飲が内停したものに見られ、寒証・湿証を示す。「燥苔」は熱盛傷津・陰液虧損・燥邪傷肺などによる津液不足でみられるが、何らかの原因で津液が上承することができなくても生じる。「膩(じ)苔」(粘って油状にベッタリした舌苔)は、湿が内にこもって陽気を阻滞することによって生じ、湿盛・痰飲・食積・湿熱・頑痰などで見られる。「白滑膩苔」は湿盛・寒湿を、「黄膩苔」は痰熱・湿熱・暑熱・湿熱・食滞・湿や痰の化熱を、それぞれ表す。また、「黒膩苔」や「粘膩苔」は湿熱を、「垢膩苔」は湿濁が盛んなことを示す。「腐苔」(豆腐のカスのような舌苔)は陽熱有余を表すことが多く、食積や痰濁によって熱邪が胃中の腐濁を蒸騰するために生じる。「剥苔」(舌苔が部分的、あるいは完全に剥落したもの)は胃気と陰液の存亡に関係があり、部分的に剥落したものは「花苔」といって胃の気陰両傷を示す。「花剥」で膩苔を兼ねるものは、痰濁が残存しながら正気が損傷されたことを意味する。

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